逃げたい
上原さんから夜中のメールが届くようになってから、3度の週末が過ぎました。
週末のたびに上原さんから、「会えませんか?」とお誘いをいただくのですが、断ってしまっています。
とても心苦しいのですが、理由を一言で言えば、怖いのです。
上原さんが怖いのではなく、上原さんのように暗く悲しい過去に囚われる毎日が、また私自身の身におとずれてしまうのが、怖いのです。
事実、上原さんから「妻の声が聞こえて眠れない。」などとメールが来るようになってから、私も過去のことを思い出すことが増えました。
毎日毎日過去のことばかり考えて、泣いたり、「あの時ああすれば良かった。」「あの時こうしていれば、今ここに子供と先輩がいたかもしれないのに。髪も抜けなかったかもしれないのに。」とくよくよと過ごしていた日々は、本当に暗くて希望の無い毎日でした。
上原さんからメールが来るたびに、その頃の記憶がよみがえり、暗い闇へと心が引きずられそうになるんです。
電車や道端で赤ちゃんや幸せそうな家族を見るたびに、また過去に遡って辛い気持ちを反芻してしまう。
顔をあげられなくて、下を向いて、心が重くなる。
あの頃の自分がじわじわとよみがえってきているのを、感じるのです。
婚約破棄と流産は、決して忘れられない悲しい経験だけど、やっとその過去に囚われることから抜け出し、婚活を始めた私。
あの頃に、もう戻りたくない。
先約や体調不良を理由に断ると、その後に上原さんからくるメールは、内容が悲しみを増して、より一層つらいものになるのです。
「今日は1日中、妻が部屋に過ごしました。真夜中にベランダに足をかけているのに気がついて我に返り、ハッとしました。」
想像して、背筋がひやっとしました。
上原さんの誘いを断ったことを責められているような、自分のせいで上原さんを余計につらい気持ちにさせているような、複雑な想いで、いっぱいになり。
もう駄目だと思いました。
いつか上原さんが気がついてくれて、
「暗いメールを送ってすみませんでした。せっかくパーティーでエリコさんと出会ったのだから、もっと前向きにならなくてはいけませんよね。」というようなメールが届くように願ったけど、駄目だった。
きっとそんな日は、これからも来ない。
上原さんに近づくということは、上原さんの精神的に不安定な部分や、心の闇や傷に正面から向き合い、日々彼を慰めていくことなのだ。
それは、私が当初想像していたよりも、ずっと難しいことなのかもしれないです。
私が精神的に耐えられない。
結局、何もしてあげられない。
情けないです。
お読みいただきありがとうございます。
ad
ad
関連記事
-
お金は最低限あればいい?②
五十嵐さんは、親戚のやっているご商売の関係会社に勤務していました。 五十嵐さんだ …
-
悪夢
夜になって、さすがに「このままにしておくのは良くない」と思い、やっと私はこう返信 …
-
お見合いパーティーの延長戦-3
女性から、婚活パーティーの話を色々と聞いているうちに、スタッフの方が戻ってきまし …
-
人としての格差
先生との初めての面会は、ランチを食べながらでした。 私も口数が多いほうではありま …
-
婚活サイトで出会った男性、大竹さん
昨日は婚活サイトで知り合った方と、2回目の面会でした。 (面会という言い方で合っ …
- 前の記事
- 疑念
- 次の記事
- 上原さんとやっと終わりました