秘めた爆弾①
まるで時限爆弾を抱えているような気持ちでした。
結婚。
身辺調査。
これだけ色々と差し迫っているのに、やっぱり、どうしても、病気のことを言い出せない。
「よし、今日こそ言うぞ。」と決心したつもりでも、いざその時になったら口が開かない。
どうせもう無理なんだ。
病気じゃなくても、ただでさえ難しいこの結婚。
こんな特殊な病気を抱えて、受け入れられるはずがない。
じゃあもう言ってしまって、終わらせればいいじゃないか。
自分の爆弾は、自分で点火するんだ。
いや、どうせ終わるなら、このままフェードアウトしたい。
何も言わずに音信不通にしてしまおうか。
そうすれば、爆弾が爆発するのを見ずに済む。怪我せずに済む。
五十嵐さんから電話がくる度に、私は苦しい気持ちになっていました。
ほどなくして、五十嵐さんからついに身辺調査が始まったことを聞きました。
五十嵐さん一族が昔から懇意にしている便利屋さんのような人がいて、その人が毎回調べるそうなのです。
「本当はこういうことは言っちゃいけないのだけど、特別に教えておいてあげるよ。調査っていっても形だけだから、心配しなくていいからね。」
いよいよか…。
私も気になったので、インターネットで少し調べたのですが、結構今でもあるみたいですね、身辺調査って。
親が直接相手方のご近所を聞きまわる、というのも、よくあるそうなのです。
どんな方法でどこまで調べられるか、この時点ではわかりませんでしたが、でも婚約破棄と流産はきっと簡単にわかってしまうと思いました。
実家のご近所さんも、その時私がいた会社の人達も、みんな知っていましたから。
この事実を五十嵐さんとご両親に知られた時のことを考えたら、背筋が凍る思いでした。
時限爆弾の時計は刻一刻と進み、いつ爆発してもおかしくない状況です。
もう時間が無い。
どうしよう。どうしよう。
そう焦っていた時、五十嵐さんからこんなメールがきたのです。
「身辺調査が終わったら、今度は本家へ挨拶へ行くことになると思う。その前に知っておいてもらわなくてはいけないことがあってメールしました。今さらこんなこと知らされて驚くかもしれないけど落ち着いて読んでほしい。
実は母さんは病気です。足のことじゃなくて、心の病気です。日によって波があるけどあまり軽視できない症状です。詳しいことは直接話したいから、また週末そっちに行きます。」
お母様とお会いした時、もちろんそんな風には見えませんでした。
とてもしっかりとした、はきはきした方だと感じました。
なのに心の病気だったなんて…。
かなり驚きました。
お読みいただきありがとうございます。
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